クエーサーの降着円盤におけるインフローのメカニズムを表した図。(合肥=新華社配信/研究チーム提供)
【新華社合肥9月9日】中国科学技術大学はこのほど、同大学と中国極地研究センターの研究チームが、宇宙で最も明るい天体であるクエーサーの降着円盤にエネルギーを供給する流れ(インフロー)を初めて確認し、クエーサーの構造解析における空白の一部を埋めたことを明らかにした。研究結果は英科学誌「ネイチャー」に掲載された。
研究者によると、それぞれの銀河の中心部分(銀河中心核)には必ず超大質量のブラックホールが存在する。それらは極めて大きな引力で周囲の星間物質(ISM)を高速で飲み込み、一部の物質は飲み込まれる前にエネルギーとなって放出され、その銀河全体よりも明るくなって、クエーサーを形成する。クエーサーはパルサー惑星、星間分子、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と並び、1960年代以降の天文学上の四大発見の一つに数えられる。
星間物質はインフローによって「食いしん坊」なブラックホールに次々と飲み込まれ、下降する過程で明るい降着円盤を形成する。クエーサーが降着円盤を介して物質をエネルギーに変える過程は既に解明されているが、降着円盤が継続的に物質の供給を得るメカニズムについては、まだ明らかになっていなかった。継続的な物質の供給がなければ、ブラックホールは間もなく周りの物質を使い果たし、クエーサーも発光しなくなる。この供給過程は発光中心から離れており、天体望遠鏡で観測するのは難しい。
研究者は八つの明るいクエーサーのスペクトルから、励起状態にある水素やヘリウムの吸収線を観測。これらの吸収線には宇宙膨張による赤方偏移だけでなく、ドップラー効果による赤方偏移に関する情報も含まれている。赤方偏移とは、物体から放射された電磁波の波長が長い側にずれる現象を指す。研究チームのリーダーである周宏岩(しゅう・こうがん)教授は「クエーサーのスペクトル中の吸収線は、クエーサーと地球の間にある物質によって形成されたもので、吸収線のドップラー効果による赤方偏移は物質がわれわれから離れていることを示しており、これは物質がクエーサーの中心に近づいていることを意味する」と説明した。
研究チームがドップラー効果による赤方偏移の幅に基づいて計算した結果、物質のインフロー速度は毎秒5千キロで、ブラックホールが「全て飲み込む」までに数百年かかり、クエーサーはその間も輝き続けることが明らかになった。
研究チームの一員である中国科学技術大学の孫鹿鳴(そん・ろくめい)博士は「研究における最大のイノベーションは、宇宙で最もよく見られる水素とヘリウムの原子が特定の状況下で生じた吸収線の赤方偏移に対する観測を通じて、物質の運動速度と物質からクエーサーまでの距離という二つの情報を同時に得たことだ」と指摘。研究成果がクエーサーや超大質量ブラックホールの発達傾向などを理解するための新たな出発点になるとの見方を示した。(記者/陳尚営)
2019年9月9日 1時22分 新華社通信
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